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第10回 Newtonの粘性法則とEyringの粘性モデル [EHL理論]

前回と前々回の話はトラクションのお話でした。ごちゃごちゃ書きましたが結局何が言いたかったというと、「油自体に動力を伝達する能力があって、それは2物体間にすべりがあることで初めて発生する」ということでした。じゃあこの「すべりによる伝達力は油のどういう特性から発生するものなのでしょうか?」というのが今回のおはなしです。

まず、一般的な流体において、ニュートンの粘性方程式があるのは第1回でも触れましたし元々ご存知かと思いますが、これについて簡単に触れます。まず図1ですが、これは床と板のすきまhに油が詰まってて、底面積Aの板を速度Uで動かす状況の図です。で、この板を動かすのに荷重が必要になるというのがニュートンの粘性法則で、ここではその荷重をFとしてます。具体的に式で表すと、

10_01_粘性流動.jpg
図1.粘性流動

10_(1).jpg
となります。せん断応力をτ[=F/A]とおいて、(1)を一般的な形にすると
10_(2).jpg
となります。これがニュートンの粘性方程式ですね。

まあ、ただの粘性の話なんですが、ここで改めて言いたいことは、「油の粘性があるせいで板を動かすのに力が必要になる」ってことです。で、図1は板と床のモデルなので床は完全固定されてますが、油を介して板から力を受けてるのはわかると思います。つまり床は油によって図1の右方向へ「駆動」する力を受けてるわけです。なのでこれも立派なトラクション力です。床が固定されてなければ板につられて床もきっと一緒に動くでしょう。

ただし、ここまでのおはなしは御承知の通り、一般的な流体潤滑状態での話です。これに対してCVTや遊星ローラなどのトラクションドライブにおける油の状態はちょっと特殊な状態になっておりまして、新しい考えを取り入れる必要があります。具体的には以下の2つです。

①ニュートンの粘性方程式が成り立たなくなる。
②油には粘性だけでなく「弾性」も備えており、特にEHL状態ではそれが支配的になってくるため、粘性と弾性の両方を考慮する必要がある。

このうち②はボリュームがあるので次回にして、今回は①についておはなしします。

まず、図2を見て下さい。ニュートン粘性と書いてある方はせん断速度とせん断応力が比例しております。これは式(2)をそのまま図に書いただけで、このような傾向を示す流体をニュートン流体と言っております。しかし現実にはニュートン流体は存在せず、図2のアイリング粘性と書いてある方のように、せん断応力がτ0を超えたあたりから比例しなくなります。このτ0は油の種類や条件によって変わりますが、傾向としてはそんなかんじです。

10_02_アイリング粘性.jpg
図2.アイリング粘性

で、この傾向をアイリングという人が分子論的に検証して定式化したのが以下の式になります。
10_(3).jpg
これがEyringの粘性モデルです。ちなみにγドットはせん断速度で、式(2)で言うdu/dyと同じものと思ってください。τ0は特性応力もしくはEyring応力といわれているもので、τ≦τ0の時は
10_(4).jpg
と近似できるので、式(3)は
10_(5).jpg
となり、式(2)と同じ形になります。つまりτ0はニュートン流体として成り立つ限界の応力ということです。これは図2からもわかると思います。


では今回はここまで。次回は先ほどの予告通り、油の粘性だけでなく弾性も考慮したモデルのおはなしをします。

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