第1回 流体潤滑とは? [EHL理論]
さて、前回EHL理論の話をすると書きましたが、その前にまず予備知識として「流体潤滑理論」の話をします。
流体潤滑とは、互いに滑りあう2物体の表面が流体膜(油など)によって完全に離れている状態のことを言います。よく例にされるところでは、すべり軸受けと軸の摺動なんかが流体潤滑です。固定された軸受けに対して軸は回転したり摺動したりしていますので隙間に油が入っていなければ軸や軸受けの表面はすぐに摩耗していますが、間に油があるおかげで両者は接触せず、軸も摩耗せずに滑らかに動けるわけです。この状態が流体潤滑状態です。
にわか知識ですが、自分がちょっと調べたかんじではどうも以下の3つが満たされたときに流体潤滑理論が適用されるみたいです。
①2物体の表面が非常に接近しており、その隙間がわずかであること
②その隙間は流体膜(油など)で満たされており、2物体は完全に離れていること
③2物体は互いに相対運動していること
で、この状態では流体膜の中で圧力が発生し、流体膜に荷重を支える能力(負荷能力)が生まれるらしいです。つまり2物体を接触させようとする外力が働いても流体膜が持ちこたえて流体潤滑を維持してくれるみたいです。すべり軸受けの中でもとりわけジャーナル軸受を例にすると、軸にラジアル方向に力を与える、つまり軸を倒すように力をかけてしまえば倒した側の軸外径と軸受け内径は油膜が切れてもおかしくなさそうですが、流体潤滑状態であれば油の負荷能力のおかげで油膜が持ちこたえます。そのため両者は接触しないので摩耗もありません。つまり油で流体潤滑状態になることで軸受けは初めてラジアル荷重に耐えられるわけです。
このへんの考えはニュートンの粘性方程式(τ=η・du/dy)を狭い隙間に適用することで導かれる「レイノルズ方程式」が基本になっています。ということは、これまで話した現象は流体膜の粘性が原因のようです。
ただしこのレイノルズ方程式が導かれる過程にはいくつかの前提条件があります。じつはこれがたくさんありまして、
①2物体間の流体は非圧縮性ニュートン流体(τ=η・du/dyが成り立つ)である
②粘度は一定である
③流れは層流である
④体積力と慣性力の影響は無視する
⑤速度勾配は膜厚方向でのみ考える
⑥圧力は膜厚方向に沿って一定である
⑦個体壁面と流体とのすべりはない
などがあります。このブログではEHL理論の話がメインなので流体潤滑についてはあまり触れる気はないですが、この中で①と②は今後の話に関わってくるので気に留めておいてください。
では今回はここまで。では次からEHL理論についてお話します。
流体潤滑とは、互いに滑りあう2物体の表面が流体膜(油など)によって完全に離れている状態のことを言います。よく例にされるところでは、すべり軸受けと軸の摺動なんかが流体潤滑です。固定された軸受けに対して軸は回転したり摺動したりしていますので隙間に油が入っていなければ軸や軸受けの表面はすぐに摩耗していますが、間に油があるおかげで両者は接触せず、軸も摩耗せずに滑らかに動けるわけです。この状態が流体潤滑状態です。
にわか知識ですが、自分がちょっと調べたかんじではどうも以下の3つが満たされたときに流体潤滑理論が適用されるみたいです。
①2物体の表面が非常に接近しており、その隙間がわずかであること
②その隙間は流体膜(油など)で満たされており、2物体は完全に離れていること
③2物体は互いに相対運動していること
で、この状態では流体膜の中で圧力が発生し、流体膜に荷重を支える能力(負荷能力)が生まれるらしいです。つまり2物体を接触させようとする外力が働いても流体膜が持ちこたえて流体潤滑を維持してくれるみたいです。すべり軸受けの中でもとりわけジャーナル軸受を例にすると、軸にラジアル方向に力を与える、つまり軸を倒すように力をかけてしまえば倒した側の軸外径と軸受け内径は油膜が切れてもおかしくなさそうですが、流体潤滑状態であれば油の負荷能力のおかげで油膜が持ちこたえます。そのため両者は接触しないので摩耗もありません。つまり油で流体潤滑状態になることで軸受けは初めてラジアル荷重に耐えられるわけです。
このへんの考えはニュートンの粘性方程式(τ=η・du/dy)を狭い隙間に適用することで導かれる「レイノルズ方程式」が基本になっています。ということは、これまで話した現象は流体膜の粘性が原因のようです。
ただしこのレイノルズ方程式が導かれる過程にはいくつかの前提条件があります。じつはこれがたくさんありまして、
①2物体間の流体は非圧縮性ニュートン流体(τ=η・du/dyが成り立つ)である
②粘度は一定である
③流れは層流である
④体積力と慣性力の影響は無視する
⑤速度勾配は膜厚方向でのみ考える
⑥圧力は膜厚方向に沿って一定である
⑦個体壁面と流体とのすべりはない
などがあります。このブログではEHL理論の話がメインなので流体潤滑についてはあまり触れる気はないですが、この中で①と②は今後の話に関わってくるので気に留めておいてください。
では今回はここまで。では次からEHL理論についてお話します。
2011-04-09 22:41
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この前、内燃機関シンポジウムでCCSCモデルの話を聞きましたが、こういった摩擦損傷の臨界条件を求められない理論よりも、CCSCモデルの方が魅力的に見えました。油膜が切れても、実は境界潤滑状態ですぐには損傷しない。それは、油が分解してできるグラファイトが表面に形成されるからだと。そして化学反応によりダイヤモンド化したら表面損傷が起こる。こういった化学反応によるナノダイヤ形成がトリガーになれば化学反応速度の計算環境を整えると材料損傷が予測できるのではないか。
いずれにしてもSmall Engine化していくと境界潤滑状態はぐっと増えるのでそこを考えてゆかないといけない。
by アダマンタン (2018-12-01 03:25)
グラファイト層間化合物(GIC)結晶の極圧添加剤効果の澄み切った論法は物凄く感動しました。
by トライボロジスト (2019-05-01 19:19)
プラントメンテナンスにラマン分光法は物凄く役に立つのではと思いました。
by 関西全力 (2019-05-18 20:36)
ブランド力ではなく土下座力が必要になるかも。
by プラントメンテナンス通信社 (2019-06-03 04:18)
他にも日本製鉄の宮島さんの論文もこの現象を支持しておられますね。
by 鉄鋼関係 (2019-06-03 19:55)
まあ久保田博士ほど明確ではないし、ゴチャゴチャした潤滑油の論法は流通と結びついてSF化している世界と訣別できていない。これじゃ高性能な機械は出来ないですよね。これが機械工学をネガティブに支配してきたものなのかもしれません。
by R&Dレポート (2019-06-18 03:30)
応力によって解決しようとし続けた機械擬儒者と、石油学会にみられる本質のチラ見せ。しかし地球環境自体を守る姿勢から考えると日本トライボロジー学会を中心に活躍している久保田博士でしょうね。
by 学協会駆け引き研究者 (2019-06-29 20:44)
この理論に私自身興奮していますが、なぜ広がらないのかは「ダイヤモンド シンポジウム」とか「ニューダイヤモンド フォーラム」というあまり歴史のない学協会かもあやふやな団体が原因ではないのか?
by 品質工学研究者 (2019-10-20 23:43)
今のところ久保田博士はそこでは講演していないようです。
by 兵庫県立大学研究者 (2019-10-21 22:57)